言語聴覚士として働く皆さんの中には、「今の収入で将来は安心できるだろうか」「専門性を活かしてもう少し収入を増やしたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
近年、医療従事者の副業への関心は高まっていると言われており、言語聴覚士の分野でも副業を検討する方が増えているとされています。
この記事では、言語聴覚士が副業で失敗しないための具体的な判断基準から実践的な始め方まで、実際に行動に移せる情報をお伝えします。
「自分にはどの副業が向いているのか」「どこから始めればいいのか」を明確に判断できるよう、段階別のプランも含めて解説していきます。
言語聴覚士におすすめの副業4選
言語聴覚士の副業は、大きく3つのタイプ(高収入・安定重視・在宅型)に分類することができます。
ここでは4つの副業をご紹介します。
高収入重視:訪問リハビリテーション
収入実績:時給4,000円、週2回で月10〜13万円
難易度:★★★★☆
始めやすさ:★☆☆☆☆(経験3年以上推奨)
具体的な収入例:
- 土曜午前4時間+平日夜4時間の週8時間勤務の場合
- 月収:4,000円×8時間×4週=128,000円
- 年収増加:約150万円
向いている人:
単独での臨床判断に自信があり、移動時間も含めた時間管理ができる人
始め方:
- 日本言語聴覚士協会の追加補償加入(必須)
- Indeed、PTOTSTワーカーで「言語聴覚士 訪問リハビリ 非常勤」を検索
- 履歴書で自律的な臨床経験をアピール
- まずは週1回から開始して慣れる
注意点:
本業での集中力低下が3週間以上続く場合、移動疲れで体調不良が頻発する場合、利用者とのトラブルが発生した場合は中止を検討する
安定重視:施設での非常勤業務
収入実績:時給1,500〜2,200円、週1〜2回で月4〜8万円
難易度:★★☆☆☆
始めやすさ:★★★☆☆(経験1〜2年でも可)
具体的な収入例:
- 土曜日6時間勤務の場合(時給1,800円)
- 月収:1,800円×6時間×4週=43,200円
- 年収増加:約50万円
向いている人:
基本的な臨床スキルを持ち、チーム医療に適応でき、新しい分野に学ぶ意欲がある人
始め方:
- 興味のある分野(小児・高齢者・精神科など)を決定
- ハローワークや求人サイトで「機能訓練指導員」を検索
- 見学や体験勤務で職場の雰囲気を確認
- 週1回からスタート
注意点:
本業への影響を最小限に抑えるため無理なシフトを組まないこと、職場との相性が合わない場合は見直すこと
在宅重視:医療系Webライター
収入実績:記事単価2,000〜10,000円、月3〜5万円
難易度:★★☆☆☆
始めやすさ:★★★★☆(未経験でも可能)
具体的な収入例:
- 開始1〜3ヶ月:文字単価0.8円、月1〜2万円
- 4〜6ヶ月:文字単価1.5円、月3〜4万円
- 7ヶ月以降:文字単価2円以上、月5万円以上も可能
向いている人:
継続的に執筆活動ができ、医療知識を正確に記述できる人
始め方:
- クラウドワークス・ランサーズに登録
- プロフィールに言語聴覚士資格を明記
- 最初の5〜10記事は低単価でも実績作りを優先
- ポートフォリオを充実させて単価交渉
注意点:
3ヶ月継続しても月1万円に達しない場合、執筆が苦痛で続けられない場合、本業の勉強時間を大幅に削る場合は見直す
専門性重視:オンライン相談・セミナー
収入実績:セミナー1回10〜30万円、オンライン相談1回3,000〜5,000円
難易度:★★★★★
始めやすさ:★☆☆☆☆(専門知識と集客力が必要)
向いている人:
特定分野で深い専門知識を持ち、マーケティングやブランディング、継続的な情報発信や顧客管理ができる人
始め方:
- 得意分野を1つに絞る(小児発達、嚥下、失語症など)
- SNSやブログで専門情報を3ヶ月以上発信
- 無料の小規模勉強会から開始し、参加者の反応を見て有料化を検討
注意点:
収入が安定するまで1年以上かかることが多く、集客には時間と労力が必要。医療行為との境界線を常に意識する
言語聴覚士の各副業の特徴を理解して、自分の状況や目標に合った選択をすることが重要です。
あなたに適した言語聴覚士の副業を見つける自己診断
言語聴覚士の副業選択において、まず自分の状況を客観的に把握することが成功の第一歩です。
以下の診断で、あなたに最適な副業の方向性を確認してみましょう。
副業適性診断チェック
【経験・スキル面】
- 臨床経験3年以上で、単独での判断に自信がある → 訪問リハビリ適性あり
- 臨床経験1-3年で、新しい分野に興味がある → 施設非常勤適性あり
- 文章を書くことが苦にならない → Webライター適性あり
- 人前で話すことが得意で、教えることが好き → セミナー講師適性あり
- 特定分野で深い知識がある → オンライン相談適性あり
【時間・環境面】
- 土日や平日夜に4-6時間確保できる → 訪問リハビリ・施設非常勤向き
- 平日の隙間時間(1-2時間)を活用したい → Webライター向き
- 不定期でも高単価の仕事を希望 → セミナー講師向き
【目標・リスク許容度】
- 月10万円以上の収入を目指したい → 訪問リハビリ検討
- 月3-5万円程度で十分 → Webライター・施設非常勤検討
- 収入より経験・スキル獲得を重視 → 新分野の施設非常勤検討
- リスクを最小限に抑えたい → 一般的な副業から開始
副業選択フローチャート
あなたの臨床経験年数は?
├ 3年未満 → 施設非常勤orWebライターから開始推奨
└ 3年以上 → 次の質問へ
高収入(月10万円以上)を重視する?
├ はい → 訪問リハビリを検討(要リスク管理)
└ いいえ → 次の質問へ
時間の融通を重視する?
├ はい → Webライター・オンライン系を検討
└ いいえ → 施設非常勤を検討
新しいスキル獲得も重視する?
├ はい → Webライター・セミナー講師を検討
└ いいえ → 施設非常勤で安定重視
この診断結果を踏まえて、次に各副業の詳細な特徴とリスクを確認していきましょう。
言語聴覚士が副業を始める際に確認するべきポイント
言語聴覚士が副業を始める前に、必ず確認すべき法的・制度的な制約があります。
これらを無視すると重大なトラブルにつながる可能性があるため、必ず確認をしておきましょう。
【最重要】勤務先の就業規則確認
- 副業の全面禁止 vs 条件付き許可 vs 届出制
- 競業避止義務の範囲(同業他社での勤務禁止など)
- 事前申請や報告の手続き
人事部門への直接相談が最も確実とされています。就業規則を読むだけでは解釈が曖昧な場合があるため、具体的にどのような副業なら問題ないかを確認することが推奨されています。
税務・確定申告の準備
副業による年間所得が20万円を超える場合、確定申告が義務となります。
筆者自身も毎年確定申告を行っていますが、e-taxを利用してオンラインで簡潔することができます。
確定申告に備えて準備するべきもの:
- 収入・支出の記録システム
- 必要経費のレシート保管
- 税理士相談の検討(年収が大幅に増える場合)
賠償責任保険(臨床系副業の場合)
個人で臨床系副業を行う場合、万が一の事故や過誤による損害賠償は、すべて自分で負うことになります。そのため、賠償責任保険は必須です。リハビリ中の事故や物品破損、個人情報漏洩など、STの業務には予期せぬリスクが常に存在します。
最も現実的で低コストの選択肢は、日本言語聴覚士協会の賠償責任保険です。
内容を簡単にまとめると、以下のような仕様になっています。
保険種類 | 年間費用 | 補償内容 |
---|---|---|
基本補償 | 協会年会費に含む | 対人賠償最大3,000万円 |
追加補償(任意加入) | +1,600円 | 対人賠償最大1億円+対物賠償・事故初期対応費用もカバー |
フリーランスや副業で臨床を行うSTは、この追加補償に加入することで、自分の生活とキャリアを守るための十分なセーフティネットを手に入れられます。民間保険もありますが、まずは協会の追加補償が最も手軽で費用対効果が高いといえます。
【タイプ別】言語聴覚士の副業プラン
言語聴覚士として副業を始めたいけれど、何から手をつければいいか迷う方へ、ここでは3タイプ別に、具体的なケースをご紹介します。
自分に合うタイプをイメージしながら読み進めてください。
Aさん:安定重視タイプ(施設非常勤)
Bさん:在宅希望タイプ(Webライター)
Cさん:高収入志向タイプ(訪問リハビリ)
どのタイプでも重要なのは、本業や健康に影響が出ていないかを常に確認することです。医療ミスや体調不良が続く場合は中止、目標収入未達や準備に時間がかかりすぎる場合は見直しを検討しましょう。
無理のない範囲での継続と本業とのバランス維持が言語聴覚士の副業成功のポイントです。
副業は単なる収入増の手段ではなく、専門性の活用範囲を広げ、将来のキャリア選択肢を増やす投資として捉えることができます。
ただし、医療従事者として患者さんへの責任を果たし続けることが大前提であり、そのバランスを保ちながら進めることが何より重要だと言えるでしょう。
まずは自己診断と事前準備から始めて、あなたに最適な副業への第一歩を踏み出してみてください。慎重な計画と継続的な努力により、理想的な働き方を実現しましょう。