小児言語聴覚士になるには? ST転職コラム

小児言語聴覚士になるには?資格取得から就職まで解説

小児言語聴覚士は、言語や聴覚、摂食・嚥下に困難を抱えるこどもたちの発達を支援する専門職です。近年、発達支援に対する社会的関心が高まる中で、この分野への就職を希望する人が増えています。

小児分野の言語聴覚士になるには、小児分野での専門的な経験や知識を求められる場面が多く、一般的な言語聴覚士とは異なる知識が必要です。

本記事では、小児言語聴覚士として働くための具体的なステップや課題、就職先の選択肢について幅広く解説します。

小児言語聴覚士とはどんな仕事?

小児言語聴覚士は、生後間もない乳幼児から学童期までのこどもを対象に、言語・聴覚・摂食嚥下機能の評価と支援を専門的に行う職種です。

成人を対象とする言語聴覚士との大きな違いは、発達途上にあるこどもの特性に応じた専門的なアプローチが求められる点です。たとえば、言葉の発達が遅れているこどもや、聴覚障害を持つこども、摂食や嚥下に困難を抱えるこどもたちに対して、個々の発達段階に応じた評価と支援を行います。

小児分野の言語聴覚士についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

現状、小児専門の資格は存在せず、一般の言語聴覚士資格を取得した上で、小児分野の専門性を現場で培う必要があります。そのため、小児分野で専門職として活躍するには、継続的な研修や実務経験の積み重ねが不可欠であり、長期的な視野でキャリア形成を考えることが重要です。

対象となる年齢別の主な仕事内容

小児言語聴覚士の業務内容は、対象となるこどもの年齢によって大きく変わります。

乳幼児期には、哺乳や摂食機能の評価、早期言語発達の促進、聴覚機能検査や補聴器の適合指導などが中心となります。この時期のこどもは、自分の意思を言葉で表現できないことも多く、高度な観察力と柔軟な対応能力が求められます。

学童期以降になると、構音障害の改善や読み書き学習の支援、学校生活でのコミュニケーション能力向上支援が重要な業務となります。

発達障がいのあるこどもに対しては、個別の特性に合わせたコミュニケーション手段の確立や、集団生活への段階的な適応を促す指導が必要です。

どの年齢層においても、保護者の期待や現実的な到達目標の調整、期待通りに改善が見られないケースへの対応など、専門的な説明能力や心理的サポート技術が求められる場面が多く存在します。

小児言語聴覚士の就職先|働ける施設と職場の特徴

小児言語聴覚士として働ける施設は複数ありますが、全体として求人数は一般的な言語聴覚士に比べると非常に限られています。

まず医療機関では、小児科のある総合病院や小児専門病院、リハビリテーション病院などが主な就職先となります。しかし、これらの施設でも小児だけを担当するポジションは少なく、成人患者と合わせて診療にあたることが一般的です。そのため、「小児専門だけで働きたい」という希望がある場合は、勤務内容や担当範囲を事前にしっかり確認することが大切です。

福祉や療育の分野では、児童発達支援センターや放課後等デイサービス、重症心身障害児施設などが代表的な就職先です。これらの施設では、小児専門での業務に携われる可能性が比較的高いですが、施設によって支援方針や専門職への理解度に差があります。そのため、働く前に施設の取り組みや環境をよく確認し、自分の専門性を活かせるかどうかを見極めることが重要です。

教育分野での就職機会としては、特別支援学校や小中学校の特別支援学級、自治体の教育相談センターなどがあります。しかし、正規職員としての採用は非常に競争が激しく、実際には非常勤職員としての雇用が中心です。また、保育園や幼稚園での巡回相談業務もパートタイムが主流であり、安定した雇用形態での就職は難しいのが現状です。

このように、小児言語聴覚士の就職環境は制約が多く、希望する分野でのキャリア形成には十分な情報収集と準備が必要となります。どの施設でどのように働くかを慎重に考えることが、将来の専門性や働きやすさにつながります。

放課後等デイサービスで働くメリット|小児言語聴覚士におすすめの職場

放課後等デイサービスは、小児言語聴覚士が専門性を存分に活かせる職場のひとつです。医療機関や教育現場と比較して、こどもたちとの継続的な関わりが可能であり、言語やコミュニケーション能力の成長を長期的にサポートできる点が大きな特徴です。そのため、言語聴覚士としてのやりがいを感じやすい環境として注目されています。

最大のメリットは、同じこどもと長期間にわたり密接に関われることです。医療機関では診療の時間が限られ、関わる期間も短くなりがちですが、放課後等デイサービスでは日常生活に寄り添った支援を継続して提供できます。その結果、こどもたちの発達の変化や成長を直接実感できるため、専門職としての達成感を得やすい環境です。

また、保護者との関係性を深く築けることも大きな魅力です。家庭での取り組み方法を具体的にアドバイスしたり、日常的な相談に応じたりすることで、こどもを中心とした包括的な支援を実現できます。医療機関では限られた時間での対応が中心となりますが、放課後等デイサービスでは日常のコミュニケーションを通じて、保護者との信頼関係をより強く築くことが可能です。

放課後等デイサービスは、小児分野で専門性を活かしながら働ける貴重な選択肢となっています。

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次に、小児分野で働くための具体的なステップについて詳しく説明いたします。

小児言語聴覚士になるには?

小児言語聴覚士として働くためにまず押さえておきたいポイントは、小児専門の国家資格は存在しないということです。

一般の言語聴覚士国家資格を基盤として、小児分野での専門性を積み上げていくことが基本になります。

新卒で小児専門の職場に就職できるケースは限られています。医療機関では、成人患者も担当することが多いためです。小児分野専門の求人はそもそも数が少なく、新卒で就職しようとすると狭き門となっています。

多くの場合は一般の言語聴覚士として経験を積みながら、即戦力として小児分野への転職やキャリア形成を目指すのが現実的な戦略となります。

すぐに小児専門性を活かしたい場合は、放課後等デイサービスや児童発達支援センターの方が現実的な選択肢となるでしょう。

小児分野で専門性を確立するには、継続的な学習と実務経験が不可欠です。以下では、具体的なステップに分けて説明します。

ステップ1:言語聴覚士の国家資格を取得する

小児分野で働く第一歩は、言語聴覚士国家資格の取得です。この資格は、指定養成施設で所定課程を修了した後、年1回実施される国家試験に合格することで得られます。養成課程には3年制・4年制があり、小児分野を志望する場合は、小児関連科目が充実している学校を選ぶことが重要です。

言語聴覚士の養成課程についての詳しい解説はこちら

国家試験は筆記試験で構成され、基礎医学や臨床医学、言語聴覚障害学など幅広い分野から約200問が出題されます。合格率は例年60~70%程度で、医療系国家資格として標準的な難易度です。小児分野に関連する内容としては、発達心理学や小児科学、特別支援教育などが含まれるため、これらの領域をしっかり学習しておく必要があります。

ただし、資格を取得しただけでは小児分野での就職は保証されません。資格取得後に実務経験を積むことこそ、専門性を築くための出発点となります。

ステップ2:小児分野での実務経験を積む

第二のステップは、小児関連施設での実務経験を得ることです。新卒で小児専門職場に就職するのが難しい場合は、まず一般の言語聴覚士として就職し、医療機関などで小児患者にも関わりながら経験を積むのが現実的な方法です。

実務経験では、乳幼児から学童期まで幅広い年齢層や、軽度から重度までさまざまな症例に対応することが重要です。こうした経験を通じて、小児特有の評価技術や支援方法を身につけることができます。

また、並行して小児分野に特化した研修やセミナーに参加することも専門性向上に欠かせません。日本言語聴覚士協会や関連学会が主催する研修プログラムは、最新の知見や技術を学べる貴重な機会です。費用や時間はかかりますが、専門性を客観的に示すためには重要な取り組みとなります。

ステップ3:小児分野の専門性を深めて認定資格や研究活動に挑戦する

第三のステップでは、さらに専門性を深め、小児分野に関連する認定資格の取得や研究活動に取り組みます。小児分野に特化した認定資格は限られていますが、摂食嚥下リハビリテーション学会認定士や特定の評価法に関する資格など、小児業務に役立つ資格があります。

  • 認定言語聴覚士:小児領域では「言語発達障がい」「吃音・小児構音障害」などが対象。臨床経験5年以上と講座・症例検討・試験合格が必要。
  • 摂食嚥下リハビリテーション学会認定士:小児の嚥下障害に関する専門性を証明。臨床・研究経験や学会参加が要件。
  • その他の資格・研修:特別支援教育士(S.E.N.S.)、応用行動分析(ABA)、特定の発達評価研修など、現場での支援技術向上に有用。

加えて、学会発表や論文投稿などの研究活動を行うことで、小児分野における専門家としての地位を確立することができます。現場での症例検討や支援方法の報告は、専門性を客観的に示す重要な手段です。

後進の指導や他職種との連携において中心的な役割を担うことも期待されます。チームで原卓中でリーダーシップを発揮し、施設内で小児分野の中核的存在として活躍することで、さらなるキャリア発展の道が開けます。

小児専門の国家資格は存在しませんが、専門性を高めながら経験を積むことで小児分野への移行が可能となります

次に、小児分野に特化した学習と準備について詳しく説明いたします。

小児言語聴覚士になるための養成校選びのポイント

小児分野に強い言語聴覚士の養成校でを選ぶことで、授業・実習で小児への評価・支援経験を積むことができます。

これは「将来的に小児分野で働くときの基盤づくり」として有効です。

小児分野では、正常発達の理解を基盤にして、こども一人ひとりの特性に合わせた柔軟な支援が求められます。そのため、理論と実践の両方をバランスよく学び、継続的に学習する姿勢が重要です。

小児専門のカリキュラム

まず注目したいのはカリキュラムです。シラバスに「言語発達障がい学」「小児聴覚障害学」「小児発声発語障害学」などの専門科目がどれだけ配置されているか、また講義だけでなく演習や実習が組み込まれているかが重要です。加えて「発達心理学」のような基礎科目も小児分野の理解には欠かせません。

小児分野に関わる臨床実習

次に大切なのは臨床実習の質です。言語聴覚士には法律で定められた実習時間がありますが、その中で小児科のある病院や療育センター、特別支援学校など多様な施設で経験を積めるかどうかが重要になります。1年次から段階的に見学・評価・総合実習へと進むプログラムを持つ学校は、早期から臨床感覚を養える点で有利と言えるでしょう。

こどもの支援に関する学内施設

さらに学内での実践的な学びの場も見逃せません。「ことばの相談室」や「言語発達支援センター」といった学内施設があれば、学生は教員の監督のもと地域のこどもたちへの支援に関わることができます。学外実習の前に現場を体験できる環境は、学びの質を一段と高めてくれます。

小児分野の経験を持つ教員

また、どのような教員から学べるかも重要です。小児臨床に豊富な経験を持つ教員が在籍している学校は、理論と実践を結びつける上で大きな強みとなります。

次に、小児分野での就職活動について詳しく説明いたします。

小児言語聴覚士の就職活動について

小児言語聴覚士の就職活動は、一般的な言語聴覚士の就職活動と比べて少し難易度が高くなります。

求人数が限られていること、競争倍率が高いこと、そして専門性が重視されることなど、複数の課題が存在します。

就職を成功させるためには、早期からの情報収集や人脈形成、専門性向上への継続的な取り組みが重要となります。また、希望する職場への就職が困難な場合に備え、代替案もあらかじめ検討しておくことが、キャリア形成の観点からも有効です。

小児分野の求人の探し方

小児分野の求人情報は、一般的な求人媒体では見つけにくく、専門的な情報収集が求められます。言語聴覚士専門の求人サイトでも、小児分野の求人は全体の約1割程度と少なく、掲載期間も短い傾向があります。

最も有効な情報源は、実習先や見学先での人脈です。実習指導者や職場の先輩から、公開されていない求人情報を得られる可能性があります。ただし、実習先でも常に採用枠があるわけではなく、採用時期が数年先になる場合もあることを理解しておきましょう。

専門職向けの人材紹介会社を利用する場合は、小児分野での紹介実績がある会社を選ぶことが大切です。しかし、紹介可能な求人数自体が少ないため、希望する求人が必ずしも得られるとは限りません。ハローワークでは地域の小規模療育施設の求人が見つかることもありますが、給与水準や雇用条件について慎重に確認する必要があります。

面接で重視されるポイント

小児分野の採用面接では、専門的知識だけでなく、人間性や適性が重視されます。こどもとの関わりに必要な資質として、忍耐力、共感力、創造性、柔軟性などが評価されますが、短時間の面接でこれらを伝えるのは難しいため、具体的なエピソードを交えた説明が重要です。

採用担当者が特に注目するのは、困難な状況での対応能力です。こどもが課題に取り組まない場合の対処法、保護者からの要望への対応、多職種チームでの連携経験などを具体例として示せると効果的です。

また、実習評価や推薦状も重要です。観察力、記録の質、積極性、コミュニケーション能力などが総合的に評価されるため、実習期間中の取り組みが就職活動の成否に大きく影響します。


小児分野で言語聴覚士になるには、国家資格の取得した後、実務経験や研修参加を通じて専門性を深めることが一般的です。

ただし放課後等デイサービスでは、言語聴覚士の資格の有無によって役割が少し異なります。

言語聴覚士(ST)の資格をお持ちの場合は、専門職として評価や訓練を含めた支援に携わることができます。発達やコミュニケーションに課題を持つこどもたちに、専門的なアプローチを提供する場として大きなやりがいがあります。

一方、まだ資格を取得していない段階であっても、「支援スタッフ」としてこどもと関わることが可能です。直接的な専門訓練は行えませんが、日々の生活やあそびを通してこどもたちを支援する経験は、将来STとして働く際の貴重な土台になります。こどもの発達の変化を間近で感じられることは、学びやモチベーションの向上にもつながります。

もし「自分もこどもたちの成長を支えたい」と感じた方は、ぜひこどもプラスの求人をご覧ください。

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この記事を書いた人
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