働きながら言語聴覚士を目指す社会人にとって、夜間に通える専門学校は魅力的な選択肢の一つでしょう。
全国的に見ても、社会人が働きながら通える昼夜間部の言語聴覚士専門学校は非常に少ないのが現状です。
今回の調査では、実際に開講している学校を2校確認できましたので、ご紹介します。
さらに重要な点として、どの専門学校を選んでも臨床実習は昼間に行われるため、完全に夜だけで資格を取ることは不可能です。
この記事では、夜間に通える2校について紹介しながら、代替案もご提案します。
社会人から言語聴覚士になるために知っておきたいこと
社会人が言語聴覚士を目指す際、まず理解しておくべきは資格取得の仕組みです。
ポイントは以下の3点です。
- 通信教育だけでは言語聴覚士の資格は取れない
- 臨床実習が昼間に行われるため、社会人には大きなハードルになる
- 昼夜間部の専門学校を活用すること
詳しく解説します。
【基礎知識】言語聴覚士の資格取得ルートを確認しよう
言語聴覚士国家試験の受験資格を得るには、文部科学大臣指定の学校または都道府県知事指定の養成所を卒業する必要があります。最終学歴によって選べるコースが変わってきます。
高等学校卒業の方 3〜4年制の専門学校または大学で言語聴覚士養成課程を修了する必要があります。基礎から専門知識まで体系的に学べますが、修業年限が長くなります。
大学卒業の方 2年制の言語聴覚士専門学校に通うのが最短ルートです。既に大学で一般教養を修得しているため、専門分野に集中して効率的に学習できます。今回ご紹介する昼夜間部の2校は、この大学卒業者向けの2年制コースです。
言語聴覚士の資格取得ルートの詳細はこちらの記事で紹介しています
なぜ通信教育だけでは言語聴覚士になれないのか?
「働きながらなら通信教育で学びたい」と考える方も多いでしょう。しかし、言語聴覚士は通信教育のみで資格取得することは法律上不可能です。
理由は、言語聴覚士の養成課程において実際の患者さんと接する臨床実習が法律で義務付けられているからです。
病院や福祉施設で指導者の監督下で行う評価・訓練の実践的技能は、オンライン学習では代替ができません。
「実習の壁」を理解する
ここが社会人にとって最も重要なポイントです。臨床実習を受け入れる病院・クリニック・福祉施設・教育機関は、通常の業務時間(朝〜夕方)に運営されており、夜間に学生実習を受け入れることができません。
つまり、どの専門学校を選んでも、実習期間中は必ず昼間の時間確保が必要になります。この「実習の壁」が全国に夜間専門学校が極端に少ない根本的な理由であり、社会人が言語聴覚士を目指すうえで最大の課題となります。
昼夜間部専門学校の特徴と重要な用語解説
社会人向けの言語聴覚士専門学校で採用されている「昼夜間部」について解説します。
昼夜間部とは 平日は夜間(18:00頃〜21:00頃)、土曜日は昼間(9:00頃〜16:00頃)に授業を行うハイブリッド型の学習形態です。これにより、平日昼間は仕事を続けながら、法律で定められた必要単位数を2年間で効率的に修得できるよう設計されています。
厚生労働省の支援制度で、条件を満たす社会人が指定講座を受講すると、学費の最大40%相当額が給付される制度です。言語聴覚士専門学校の学費は高額になりがちなため、この制度の対象かどうかは経済的負担を大きく左右します。
全国2校の言語聴覚士昼夜間部専門学校を徹底比較
社会人が働きながら言語聴覚士を目指せる専門学校は、大阪と福岡にあります。
どちらも大学卒業者を対象とした2年制の昼夜間部プログラムを提供しており、平日の夜間と土曜日の昼間を活用したスケジュールで効率的に学習できるよう設計されています。
【関西エリア】大阪医療技術学園専門学校
基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | 大阪府大阪市 |
学科名 | 言語聴覚士学科 昼夜間部 |
修業年限 | 2年制 |
主な対象者 | 大学卒業者 |
授業時間 | 平日18:00〜21:10、土曜9:00〜16:10 |
在学生の特徴 | 約80%が平日昼間に仕事をしながら通学 |
平日は夜間、土曜日は昼間に授業が行われるため、仕事を続けながら学ぶことができます。関西で唯一の昼夜間2年制で、社会人にとって通いやすい仕組みが整っています。
スケジュールの特徴
「関西で唯一の昼夜間2年制」として明確なハイブリッド型を採用。
- 平日(月〜金):18:00〜21:10
- 土曜日:9:00〜16:10
在学生の約80%が平日昼間は仕事をしながら通学している実績があります。
学費とサポート制度
項目 | 内容 |
---|---|
初年度学費 | 168万円(入学金30万円+授業料等138万円) |
教育訓練給付金 | 専門実践教育訓練給付金の対象(最大112万円給付) |
学習サポート | J-WEBシステム(インターネット学習ツールで予習・復習を支援) |
専門学校の学費は高額になりがちですが、条件を満たせば最大112万円の給付金を受けることができます。
教育成果
項目 | 内容 |
---|---|
国家試験合格率 | 82.9〜95.7%(全国平均を上回る) |
就職率 | 100%(2023年3月卒業生実績) |
就職先 | 大学病院、リハビリ専門病院など幅広い分野 |
高い合格率と就職率を誇っており、卒業後は病院やリハビリ施設などさまざまな現場で活躍できます。
カリキュラムの特徴
- 基礎科目(音声学など)から専門科目(失語・高次脳機能障がい治療学など)まで幅広く学べる
- 専用の訓練室や教材作成室を完備
- 豊富な臨床実習で実践的な技術を習得
実践力を重視したカリキュラムで、卒業後すぐに現場で活かせるスキルが身につきます。設備も整っており、学びやすい環境が用意されています。
こんな社会人におすすめ
- 関西在住で大学を卒業している
- 最短2年で資格取得を目指したい
- 土曜日の通学が可能
- 経済的サポートを活用したい
【九州エリア】専門学校麻生リハビリテーション大学校
基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
所在地 | 福岡県福岡市 |
学科名 | 言語聴覚学科 昼夜間部 |
修業年限 | 2年制 |
主な対象者 | 大学卒業者 |
全国でもトップクラスの合格率を誇り、就職率も創立以来23年連続で100%。九州大学病院をはじめ、地域の主要医療機関への就職実績も豊富で、学んだ先にしっかり未来が描けます。
スケジュールの特徴
「九州で唯一、2年間で国家資格取得可能」な専門学校として昼夜間ハイブリッド型を採用。
- 平日:夜間授業
- 土曜日:昼間授業
- 総授業時間数:2,265時間
こちらも平日は夜間、土曜日は昼間に授業を行うスタイルで、働きながらでも通いやすい仕組みです。
学費と充実した経済支援
項目 | 内容 |
---|---|
初年度学費 | 145万円(入学金30万円+年間校納金115万円) |
公的支援 | 専門実践教育訓練給付金の対象 |
独自奨学金制度 | 麻生特待生制度、兄弟姉妹・親子入学支援金、オール九州奨学制度 |
学費は決して安くはありませんが、公的給付金と独自の奨学金制度が手厚く用意されています。経済的負担を減らしながら、安心して学びに専念することができます。
教育成果
項目 | 実績 |
---|---|
国家試験合格率 | 96.0%(2025年3月卒業生、全国平均72.9%を大幅に上回る) |
就職率 | 学校創立以来23年連続100% |
特徴 | 独自テキスト・少人数グループ学習・個別指導 |
カリキュラムの特徴
- 専門基礎分野と専門分野に分かれた体系的な2年間カリキュラム
- 臨床実習も段階的に組み込まれた構成
- 手厚い国家試験対策(独自テキスト、少人数指導、個別フォロー)
こちらも実践的なカリキュラム構成で、学んだ知識をすぐに現場で活かせます。国家試験対策も徹底しており、合格への道筋が明確です。
こんな社会人におすすめ
- 九州在住の大学卒業者
- 最高レベルの国家試験合格率を求める方
- 経済的支援を最大限活用したい方
- 手厚い個別指導を重視する方
大阪・福岡昼夜間部2校の比較表
大阪・福岡2校の昼夜間部専門学校を詳しく比較すると、それぞれに独自の強みがあることが分かります。
比較項目 | 大阪医療技術学園専門学校 | 専門学校麻生リハビリテーション大学校 |
---|---|---|
所在地 | 大阪府大阪市 | 福岡県福岡市 |
課程分類 | 昼夜間部 | 昼夜間部 |
修業年限 | 2年 | 2年 |
主対象者 | 大学卒業者 | 大学卒業者 |
平日授業時間 | 18:00〜21:10 | 夜間 |
土曜授業時間 | 9:00〜16:10 | 昼間 |
初年度学費 | 168万円 | 145万円 |
専門実践教育訓練給付金 | 対象(最大112万円) | 対象 |
独自奨学金制度 | 標準的 | 非常に充実 |
国家試験合格率 | 82.9%〜95.7% | 96.0% |
就職率 | 100% | 100%(23年連続) |
地域での地位 | 関西唯一 | 九州唯一 |
情報の透明性 | 高い | 高い |
通える範囲に夜間専門学校が無い社会人の方のための選択肢
お住いの地域に夜間専門学校が無い場合、社会人が言語聴覚士を目指すには転居または休職して昼間専門学校に通うことになります。
1. 大阪・福岡への転居を検討する
昼夜間部で働きながら学びたい場合は、大阪または福岡への転居が現実的な選択肢となります。転居費用や生活費も含めた総合的な計画が必要です。
2. 東京の昼間専門学校を検討する
現職を完全に辞めて学業に専念する覚悟があるなら、以下の東京の昼間専門学校も選択肢となります。
首都医校(東京都新宿区)
- 課程:昼間課程 2年制(大学卒業者対象)
- 特徴:3大保証制度(資格・就職・給与保証)による強力なキャリアサポート
- 立地:新宿駅直結の抜群のアクセス
日本福祉教育専門学校(東京都新宿区)
- 課程:昼間課程 2年制(大学卒業者対象)
- 特徴:福祉・教育分野との豊富なネットワーク
- 立地:高田馬場駅徒歩7分のアクセス良好立地
働きながらの学習を希望する場合は転居が現実的な選択肢となりますが、その際の経済的負担や生活の変化も含めて慎重に判断することが重要です。
あなたに最適な言語聴覚士専門学校の選び方
社会人が言語聴覚士の専門学校を選ぶ際は、夜間学習の制約を理解した上で、地理的条件、経済面、学習環境など、複数の要素を総合的に判断して決定しましょう。
何を重視して学校を選ぶか?
地理的条件を最重視する場合
- 関西在住・・・大阪医療技術学園専門学校が唯一の選択肢
- 九州在住・・・専門学校麻生リハビリテーション大学校が唯一の選択肢
- 関東在住・・・転居または東京の昼間専門学校を検討
どの専門学校を選んでも臨床実習期間中は昼間稼働が必須です。完全に働きながらの資格取得は不可能なため、実習期間をどう乗り切るかという事前の計画も重要になります。
大阪校・福岡校ともに昼夜間部で働きながら学ぶことを前提としていますが、土曜日の終日通学が必要な点は考慮が必要です。
経済的負担の軽減を最重視する場合
- 学費の安さ・・・福岡校(145万円)が大阪校(168万円)より23万円安い
- 給付金活用・・・両校とも専門実践教育訓練給付金対象(最大40%給付)
- 独自支援・・・福岡校の独自奨学金制度が圧倒的に充実
国家試験の合格を重視する場合
- 福岡校:96.0%(全国トップクラス)
- 大阪校:82.9%〜95.7%(年度により変動するが高水準)
統計的には福岡校が最も高い合格実績を誇ります。
転居の可能性を含めた総合的な判断
関東在住者で転居を検討する場合、福岡校が以下の理由で有利でしょう。
- 学費が安い
- 独自奨学金が充実
- 国家試験合格率が最高水準
- 23年連続100%の就職実績
適切な準備と強い意志があれば、言語聴覚士という専門職への道は必ず開けるはずです。
あなたの言語聴覚士への挑戦を心から応援しています。